腕時計とそれを取りまく世界 Since Apr 2012

Day 2012-04-21

最初に自動巻クロノグラフを作ったのはどこか?その11

IEEEという国際的にもかなり権威の高い学会に認められたセイコーアストロンの受賞でも日本語と英語が微妙に違う、という話でした。 ここで重要なのは以下のポイントです。 英語の原文では、一般向けと明示されています。業界ではすでにクォーツ時計は使われていました。セイコーの社史にも1958年、放送局向けのクォーツ時計を商品化とあります。 英語の原文では、「量産」と「発表」とを明示的に分けています。つまり、諏訪精工舎はセイコーグループの時計を生産する会社として、世界初の時計の量産に成功しました。その発表は1969年の12月25日に行なわれた、となっています。 特にこの2.「量産」と「発表」とが分かれている点が重要です。つまりは、量産の準備さえできていれば、センセーショナルな発表の後に量産を開始、実際の「発売」は後でもいいことになります。 ところが日本語訳では、一言で、1969年12月25日に「発売」した、となっています。「発売」という場合、すでに量産は完了しており、その発表当日に量産一号を入手することができるわけです。発表前に量産しているのは当り前のことで、わざわざ量産と発表とを分ける必要はない。腕時計は量産してナンボであって、準備ができたから発表した、その日にはモノを入手できるのは当り前だよ、ということなのでしょう。 さて、この日本の常識って、世界の常識なんでしょうか?

最初に自動巻クロノグラフを作ったのはどこか?その10

さて世界初の話の続きです。この定義がどのくらい難しいのか、クォーツの世界初の話を例にとって検証してみましょう。 セイコーは、2004年、クォーツ式腕時計の開発で、IEEE(アメリカの電子情報通信学会)からマイルストーン賞を受賞しています。IEEEは電気、電子業界では国際的にも権威が高い学会です。その学会に認められたことよる受賞ですから、少なくとも公平な立場から見て世界的に大きなインパクトを残したと、世界から認められたということに他なりません。 ではその日本語を見てみましょう。 抄訳すると、 10年間の開発努力の末、1969年12月25日に世界に先駆けて発売した、 となっていますね。 この「発売」が重要です。ちょっと気にかけておいてください。 IEEEはアメリカの学会ですから、原文は英語です。 簡単に訳してみますと、 諏訪精工舎は、セイコーの生産会社として、一般向けとして最初のクォーツ腕時計を量産した。それは1969年の12月25日に東京で発表された。 となります。 ちょっと違うのが分かりますね。これが実はかなり大きな違いになってきます。

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