機械式時計と比較されるクオーツ時計についての続きです。クオーツ時計は、精度に優れ、耐衝撃性にも配慮でき、安価です。時間を知るための機械として、これらはとても大きなアドバンテージと思えます。

では、クオーツ時計に欠点はないのでしょうか?クオーツ時計といっても、人間が作った機械ですから当然制約があります。機械式時計の大きな制約がムーブメントにあったように、クオーツもその駆動部分に制約条件があるかもしれません。

まず、機械式時計はゼンマイを動力として動きますが、クオーツ時計は電気を動力源として動きます。機械式時計は基本的には毎日、動力源を巻きあげてくれるということを前提にすべての機構が設計されています。その一方でクオーツ時計は3年ほどは電池を取り換えなくても動くことを前提としています。ということは、クオーツ時計はできるだけ電池を長持ちさせるように、節約して使うように設計するのが大前提になっているということです。このため、大きな針をブン回すよりも、控え目な軽い針を一秒ごとに動かします。これは、デザインの上での大きな制約条件になりますし、あまりに小さな針にしてしまうと視認性の問題にもなってきます。

また、電気で動作するために、ウィークポイントは電気になります。つまり、雷などのサージ電気には弱いです。滅多にはないことですが、パイロットが飛行中に雷にあい、クオーツ時計が狂って使えなくなり、それ以来ブライトリングを持ち歩くようになった、という話を実際に聞いたことがあります。

最後に、メンテナンスの制約があります。クオーツ時計のムーブメントは大量生産の電子機器です。つまりは部品の保有年数は基本的には7年から10年という一般的な電子機器の基準になります。部品があればセイコーでも古い時計のメンテナンスは受け付けてくれますが基本は7年(グランドセイコー、クレドール、ガランテは10年)になります。これはきちんとした機械式時計のメーカーとは大きな違いです。例えばロレックスではおおよそ30年です。この年数は、あれだけ多量に機械式時計を生産する会社にしてはかなり誠実な年数に思えます。またブライトリングでは、1950年代の機械式時計のメンテナンスを受け付けてもらったことがあります。パテック、バセロン、オーデマピゲ、IWC、ロンジン、オメガなども同様の体制を整えています。費用はそれなりにかかりますが、古い時計でもメーカー修理に出すことができるというのは、その時計を使い続ける上での大きな安心材料といえそうです。

表にまとめてみます。ここで取り上げているのはあくまで代表的な例になります。時計はいろんな目的で作られます。よりよい精度の時計としてはクロノメータ規格、年差クオーツなどがありますし、ムーブメントとしては、機械式とクオーツのハイブリッド、キネティックやスプリングドライブなどもあります。部品点数では機能によってかなり変わってきます。クロノグラフだと300以上の部品を使うこともあります。ゼンマイの持続時間としては、7日巻きというのもありますし、最新のムーブメントでは巻上から3日持つ(70時間のパワーリザーブ)というのも増えています。