腕時計とそれを取りまく世界 Since Apr 2012

Day 2012-05-25

最初に自動巻クロノグラフを作ったのはどこか 番外編

Last updated on September 3rd, 2021最初に自動巻クロノグラフを作ったのはどこか、番外編です。 セイコー6139スピードタイマーの発表当時のカタログを添付します。セイコーの広報部からスキャンしていただきました。 5月下旬に発売します、というカタログの文面から少なくとも69年5月以前のアナウンス用の資料だと分かります。 日付、曜日を備えたストップウォッチ機構付き自動巻き時計の量産は世界初と謳っています。その通りですね。興味深いのはここでストップウォッチという言葉を使っているということです。スイスではクロノグラフという言葉を使っています。 価格はメタルバンド付きで16,000円と18,000円。 タキメーターについて、平均時速の計測や、仕事の単位時間を計測することができ、企業の工程管理にも使える「テクニカル・ウォッチ」という位置付け。 興味深いのは、やはり「自動巻時計+ストップウォッチ機能」というマーケティング用の位置付けでしょうか。これでは一般に対する訴求力としてはあまり強くはなさそうです。日常でストップウォッチってそんなに使わないですよね。企業の工程管理に使うような用途であれば、専用のストップウォッチで計測するでしょうし、ストップウォッチ機能付き時計と言われても、あまり欲しいと思えません。1969年当時のセイコーがマーケティングに苦心していた様子が伺われます。 ところでスイスでは、これはすでに解決済みの問題でした。例えばブライトリングは、「クロノグラフがこんなに便利なのに売れないのはなぜか」というマーケティングの苦心にすでに第二次大戦後の40年代後半から直面しており、50年代にはアメリカで大キャンペーンを行っています。1960年後半のこの当時は、クロノグラフは、ストップウォッチとは別のカテゴリーですでにマーケットを確立していました。時計としての機能はきちんと保ちながら、いつでも必要な時に経過時間を計測することができるといういわばツールウォッチというカテゴリです。 アポロ13号の自動制御装置が故障し、ジェットの噴出時間の手動計測が必須になったときに、計測ツールとして使うことができるのはオメガのスピードマスターだけだったというのはあまりにも有名なエピソードです。一般人の生活にアポロ13号のトラブルほど緊急の事態が起きることはほとんどないでしょうが、いつでも必要なときに身につけているもので時間を計測できるというのは、やはり便利な道具といってよいような気がします。 SEIKO_5_SPORTS_SPEED_TIMER_release

© 2025 Wristwatchな世界 — Powered by WordPress

Theme by Anders NorenUp ↑