随分と久し振りですが、今回は、分針の針飛びの話、その続きをしましょう。機械式時計は、普通のクォーツ時計と違って、使用上の注意があります。かなり高価なのに、その上いろいろと気を使わないといけない、それが機械式時計なのです。

今回取り上げるのは、ブルガリの名機、ディアゴノ303です。ジュエラー、ブルガリは最近は時計にも力を入れていますが、このディアゴノ303はクロノグラフのフラッグシップモデルです。そしてベースのムーブメントはこれも名機のフレデリック・ピゲ(FP)の1185です。FP1185は、薄型クロノグラフを目指して設計してあり、高級クロノグラフに大変よく使われています。この薄型化のために、セイコーが開発した垂直クラッチ機構を、現代的に再設計したムーブメントとしても有名です。ブルガリは、このムーブメントをもとにチューンを施しキャリバー BVL303としてディアゴノ303に搭載しています。スペックは、21600振動(3Hz)、37石、直径 26.2mm、高さ5.5mmと、わずか5.5mmに3レジスタのクロノグラフ、デイト機構を組み込んであります。

さて、この高級ムーブメントにも分針あわせのときに針飛びが起きます。11時5分にあわせようと思ってリューズを引きます。そして押しこむと、見事に分針が1分ほど動いてしまいました!

これはブルガリだけでなく、FP1185をベースに採用している高級クロノグラフについての、ムーブメントの癖とでもいうべきものです。ちなみに実は、筆者はこのFP1185ベースのクロノグラフの分針調整が得意です。コツは、戻しあわせで、そっと押しこむことです。

ムーブメントの癖を見抜いて、使いこなすというのも機械式時計の楽しみの一つと言えるかもしれませんね。

fp1185-hack1

FP1185-hack-2