腕時計の針飛びについて、もう少し考えてみます。これは実はけっこう面白い話題かもしれません。まず、一口に腕時計といいますが、おおよそ大別して次の三つの流れがあるように思えます。
- 貴族が使っていた、高級宝飾品としての系譜。
- 実用時計としての系譜。腕時計が初めて使われたのはイギリスのボーア戦争だと言われています。正確な時間を知るというのは軍隊では生死にかかわる重大時です。当時は一般の兵士にまでは時計はいき渡らず、時計を所持していたのは士官のみでした。
- 汎用品(コモディティ)としての系譜。クオーツ登場以降、腕時計のコストが革命的に下落してからの系譜。使い捨てをしたほうが精度もコストもリーズナブルであるということで生まれたディスポーザルウォッチの系譜。
やはり時代とともに、「時を知る」という営みはコモディティとしてありふれたものになってきています。現代では正確な時を知るためには、時計ではなく携帯という方も多いことでしょう。かく書いている筆者も、電車のホームで、クオーツ時計の時間に自分の左腕の時計の時間をあわせたりしています。
ところで身の回りのどんな時計でも、「時刻をあわせる」、さほど頻繁ではないにしても、これは必須の作業です。その必須な作業をするときに針がジャンプしてしまう、これはなかなかストレスフルですよね。実用時計や汎用品(コモディディ)でこのような動作を起していたら、毎日使うのはちょっと辛くなるかもしれません。しかしその一方で高級品としての時計、毎日使うことを想定されていない時計の場合は、まあ我慢できるかもしれません。つまりは時計でいう高級時計、宝飾時計は、必ずしも実用的な価値に優先順位をつけて開発されているというわけではない場合があるということでもあります。針飛びという現象だけではなく、防水性能を見てみても、そのことは分かるかもしれません。
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