ではセイコーのクロノグラフはどうだったのでしょう?もう一度年表を並べてなおしてみましょう。

  • 1969年1月10日 ゼニスがエルプリメロの試作品をスイスの特定のプレス向けに発表
  • 1969年3月 セイコーがセイコースポーツファイブ6139を量産開始
  • 1969年3月3日 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11を大々的に発表(スイス、ニューヨーク)
  • 1969年4月 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11をバーゼルで発表
  • 1969年5月 セイコーがセイコースポーツファイブ6139を発売
  • 1969年夏 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11をデリバリー開始
  • 1969年10月 ゼニスがエルプリメロをデリバリー開始

こう並べてみるとどうですか?
どうも一番最初に自動巻クロノグラフを作ったのはセイコーのような気がしてきませんか?

ただし、残念なことにセイコーの発表は5月でした。これではセイコーの自動巻クロノグラフは、極東の島国でひっそりと量産が開始され、ひっそりと島国向けにアナウンスされた、ということになってしまっても仕方ないかもしれません。

セイコーの自動巻クロノグラフは、セイコーファイブというローコストの時計をベースにしていましたが、設計にも見るべき点がいくつかあります。クロノグラフの制御にはピラーホイールを採用しており、また垂直クラッチを世界で初めて採用しました。この垂直クラッチ、いまではロレックスのデイトナが採用していることでも有名ですが、その世界初の採用はこのファイブスポーツです。

画像は一番初期のプロダクションロット、1969年3月のセイコースポーツファイブです。それなりに数がありますので、やはり量産に成功した後でアナウンスした、と見るのが自然と思えます。

seiko6139