今回から、ジェラルド・ジェンタのロイヤルオークの特許について読みこんでみる。USPTO(米国特許商標庁)の ウェブページ から検索することで原文にあたることができますし、内容についての概略は以前にも書いていますので、お急ぎの方は、以下からどうぞ。
機械式時計のどこがいいのか その22

Royal Oak Patent - 1

まずは、特許の基本情報である。

米国公開番号:3,756,017
米国公開日:1973年9月4日

特許名称: ウォッチケース
発明者: ジェラルド・ジェンタ (ジュネーブ、スイス)
権利者: オーデマピゲ S.A.

出願番号: 301,738
出願日: 1972年10月30日

優先権主張番号:17724/71
優先日: 1971年12月6日
優先権主張国: スイス

これらのことから、まずこの特許は、いわゆる職務発明の形態であることが分かる。発明者はジェラルド・ジェンタだが、その発明の権利者はオーデマピゲS.A.である。権利者は、発明の権利の一切を保持し、かつ特許の登録に必要な弁理士の費用や出願費用などの一切を支出する。つまりこの発明を侵害すると、オーデマピゲから訴えられる可能性があるということになる。

ただし特許には期限がある。アメリカ特許法の期限は原則20年である。

特許法の理念は、発明の奨励によって産業の発達に寄与するという点にある。発明したとたんに模倣品が出て来てしまえば、発明者のモチベーションは落ちる。発明のために必要とした膨大な費用を回収できなくなってしまうし、発明すればするだけ損ということにもなりかねない。かといって、一回発明したものに対して永続的に権利をずっと保護してしまえば、類似品を未来永劫作れなくなってしまうことにもなり、産業の発展の阻害要因にもなってしまう。そこで特許法としては、産業の発展を阻害しない範囲で十分な保護を権利者に行うという観点から保護の範囲が定められ、各国の特許には期限が設定されている。

この特許は1973年の公開だから 1993年にはおそらく特許は切れている。

ということで、今現在ロイヤルオークに似たような形状の時計が出てきてもそうそう目くじらをたてる必要はないということをまずは付記しておきたい。