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Category パネライ PAM00372

機械式時計のどこがいいのか? その34

やはり機械式時計は機械式なのです。ゼンマイで動力を与えて、歯車を複数動かし、そして、何らかの目的にあった形で時間を掲示するのです。その大きな流れが軍用とドレス用です。以下の写真はパネライルミノール47mmとオーデマピゲのヴィンテージ、VZSSc 36mm です。 果してどちらが高級時計に見えるでしょうか?もちろん、パネライルミノールもかなりな高級時計です。しかし、どちらかといえば、やはり高級に見えるのはドレス時計のオーデマピゲではないでしょうか? そもそもの目的が違うので、この二つを比べるのはすこし無理がありますが、パネライは、イタリア海軍の軍用時計をモチーフに頑丈さ、防水性、精度を追求しており、ラグジュアリースポーツという新しい系統に属します。これはそもそもはオーデマピゲのロイヤルオークによって開拓された分野で、パネライが現在先陣を切って開拓している分野といってもそうは間違っていないでしょう。 一方の名機の誉れ高いオーデマピゲのVZSScです。素晴しいムーブメントを搭載しており、仕上げはもちろん、精度も当時のクロノメーター級です。1950年代の時計ですが、現在でもかなりの高精度を維持しています。一方でお世辞にも頑丈とはいえません。また、防水性もほとんどありません。 やはりムーブメントが時計の形を決める部分はかなり大きいのです。パネライのムーブメントでは、ドレス時計を作るのは至難の技でしょうし、一方のAP VZSScは、間違っても数を量産できるムーブメントではありません。現代でもオーデマピゲAP2121など仕上げの卓越したムーブメントの量産数量は限られており、故障時の代替部品の迅速な供給が求められる軍用などのハードな用途に使う時計にはまず向いてはいないでしょう。

機械式時計のどこがいいのか? その33

腕時計なんて、少しくらい厚くたっていいじゃん そのお気持ちもよく分かります。大きく格好良く厚くしっかりしている時計もたくさんあります。 防水性能は300m、クロノグラフが付いて、デイト付き、デイトはいつでも変えることができて、パワーリザーブは3日、いいですよね。頑丈で、いつでもどこでも信頼して使うことができます。 もちろん私もそういう時計もかなり好きです。しかし一方、腕時計はその構造上、外側の体積密度が高くて(密)、内側の体積密度が低くなります(疎)。外側は防水のためにステンレスや金などをはじめとする金属で覆わなければいけません。一方その中空の中身には歯車が稼動するムーブメントが入ります。稼動部分がある以上、どうしても内部を金属で100%満たすわけにはいきませんから、密度的には疎になってしまいます。 ということは原理的にはムーブメントが大きく厚くなればなるほど、時計の重心は高くなってしまう傾向が出てきます。大きくしっかりした時計を腕につけるとひっぱられる感じがします。そうなってしまうと付け心地がそれ以上悪くならないためには、時計をホールドするベルトをしっかり作る必要があります。となると、これでブレスもしっかりした重量のあるものになってきます。 「ムーブメントの厚さ」 一言にいえばたいしたことなさそうに見えますが、実はこれはかなり深いテーマなのです。元々のムーブメントが厚いとどうしたってその時計は薄型にはなれません。しっかりとした厚いムーブメントをしっかりホールドする土台、ケース、さらに厚いケースをしっかりホールドするブレスレット、こういう時計になってしまいます。 画像は PAM00372。パネライごく初期のプロトタイプ復刻です。ラジオミールケースにルミノールのリューズという独特の形状です。パネライはイタリア海軍の軍用時計がルーツですから、しっかりと作られている時計の代表格といってもいいかもしれません。

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