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機械式時計のどこがいいのか? その4

さて、機械式時計は様々な機能と見栄えとによって多種多様の分類ができそうです。そして、この機能と見栄えとは思ったよりも案外不可分です。 たとえば薄型ケースにしようとすると、どうしても薄型のムーブメントが必要になります。ところが薄型のムーブメントは体積的な制約から、歯車やクラッチ機構を別途必要とするクロノグラフ機構などは実現するのが難しくなります。防水性能も問題です。きちんと防水したいのであればやはりスクリューバックの裏蓋を採用したいところです。しかし、これがまたケースの厚みを増してしまいます。その他の主なデザイン的な制約はムーブメントのサイズ(直径)、それと針の配置です。同じムーブメントを採用すると、針の中心配置はどうしても同じになります。 まあ、時計のムーブメントはしょせん人間が作った機械ですから、欲しいものが無ければ自分で作ればいいのです。しかし少なくとも100以上の機械部品の組み合わせからなるムーブメントの作成には膨大な時間と費用が必要です。最近ではフランスの新興時計メーカー、ペキニエが会社更生法を申請したというニュースが流れました。直接の原因は、評価の高かった新作カリブルロワイヤルの開発費用が大きすぎ、売上は順調にも関わらず資金ショートを起こしたというものです。幸いにもメインバンクをはじめとする支援で大事にはいたらなさそうですが、やはり新作の開発には大きなリスクがあります。 そのため、たいていの時計メーカーは、ムーブメントメーカーから供給を受け、実績のあるムーブメントを使います。ほとんどの時計に自社ムーブを使ってきたロレックスでも、クロノグラフについては2000年まで他社製ムーブメントをチューンして用いていました。ずっとETA社製ムーブメントをチューンして用いていたブライトリングが、自社製のクロノグラフムーブメントを発表したのは2009年です。 写真はチュードル クロノタイム。1990年代の作で、チュードルが独自チューンのために選んだベースムーブメントは、ブライトリング クロノマット エボリューションと同じ Valjoux 7750。3つのインダイヤルの配置がまったく同じです(12時位置に30分計、9時位置に秒針、6時位置に12時間計)。 二つを比較してみますと、同じムーブメントをベースとして採用していながら、クロノマットのほうが一回り大きいことが分かります。この違いは主に求められる防水性能の違いから来ています。クロノマットは300m防水、このクロノタイムは初期型ですので50m防水です。 側面からです。このクロノタイムは、通称カマボコケースと呼ばれる分厚いケースを採用しています。クロノマットはほぼそれと同等の厚さのしっかりしたケースを採用しています。 違いを簡単にまとめてみますと以下です。同じムーブメントをベースとして採用していても、設計コンセプトが違うとこんなにも違いが出てきます。

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