さて、機械式時計は様々な機能と見栄えとによって多種多様の分類ができそうです。そして、この機能と見栄えとは思ったよりも案外不可分です。 たとえば薄型ケースにしようとすると、どうしても薄型のムーブメントが必要になります。ところが薄型のムーブメントは体積的な制約から、歯車やクラッチ機構を別途必要とするクロノグラフ機構などは実現するのが難しくなります。防水性能も問題です。きちんと防水したいのであればやはりスクリューバックの裏蓋を採用したいところです。しかし、これがまたケースの厚みを増してしまいます。その他の主なデザイン的な制約はムーブメントのサイズ(直径)、それと針の配置です。同じムーブメントを採用すると、針の中心配置はどうしても同じになります。 まあ、時計のムーブメントはしょせん人間が作った機械ですから、欲しいものが無ければ自分で作ればいいのです。しかし少なくとも100以上の機械部品の組み合わせからなるムーブメントの作成には膨大な時間と費用が必要です。最近ではフランスの新興時計メーカー、ペキニエが会社更生法を申請したというニュースが流れました。直接の原因は、評価の高かった新作カリブルロワイヤルの開発費用が大きすぎ、売上は順調にも関わらず資金ショートを起こしたというものです。幸いにもメインバンクをはじめとする支援で大事にはいたらなさそうですが、やはり新作の開発には大きなリスクがあります。 そのため、たいていの時計メーカーは、ムーブメントメーカーから供給を受け、実績のあるムーブメントを使います。ほとんどの時計に自社ムーブを使ってきたロレックスでも、クロノグラフについては2000年まで他社製ムーブメントをチューンして用いていました。ずっとETA社製ムーブメントをチューンして用いていたブライトリングが、自社製のクロノグラフムーブメントを発表したのは2009年です。 写真はチュードル クロノタイム。1990年代の作で、チュードルが独自チューンのために選んだベースムーブメントは、ブライトリング クロノマット エボリューションと同じ Valjoux 7750。3つのインダイヤルの配置がまったく同じです(12時位置に30分計、9時位置に秒針、6時位置に12時間計)。 二つを比較してみますと、同じムーブメントをベースとして採用していながら、クロノマットのほうが一回り大きいことが分かります。この違いは主に求められる防水性能の違いから来ています。クロノマットは300m防水、このクロノタイムは初期型ですので50m防水です。 側面からです。このクロノタイムは、通称カマボコケースと呼ばれる分厚いケースを採用しています。クロノマットはほぼそれと同等の厚さのしっかりしたケースを採用しています。 違いを簡単にまとめてみますと以下です。同じムーブメントをベースとして採用していても、設計コンセプトが違うとこんなにも違いが出てきます。
さて機械式時計の大分類はできました。引き続き、その機械式WristWatchに含まれる機能を分類していきましょう。 時計ケースおよび外装 ケースサイズ(幅20mm~50mm、厚さ7~15mm) ケース形状(ラウンド、角型、樽型、長方形、クッション、楕円形) ケース材質(ステンレス、プラチナ、イエローゴールド、ホワイトゴールド、レッドゴールド、チタン、金メッキ、金張リ、セラミック、アルミニウム、ザリウム) 防水機能(非防水、日常生活防水、日常生活強化防水、空気潜水、飽和潜水) 対磁能力(JIS一種、JIS二種) ケース裏蓋(スナップバック、スクリューバック、一体式、シースルーバック) ケース仕上げ(ポリッシュ、ヘアライン) ベゼル形状 (フラット、コインエッジ、ステップド、両方向回転式、片方向回転式) ガラスの材質(プラスティック、ミネラルガラス、サファイアガラス) ガラス形状(平面、ドーム) ガラスコーディング(コーディングなし、片面無反射コーディング、両面無反射コーディング) リューズの形状(オニオン、ラウンド、ストレート、ファセット) ベルト材質(カーフ、クロコ、リザート、ウレタン) バックル形状(尾錠、3つ折れ、観音開き) 文字盤 表示機能(時分秒、日付、曜日、月齢、GMT機能、クロノグラフ機能、ワールドタイム、永久カレンダー) 色(白、マットブラック、ミラーブラック、ブルー、レッド、グラデュエーション) 材質(メタル、エナメル、シェル、メテオライト) 装飾(ギョーシェ、タペストリー、スケルトン、インダイヤルのレコード溝) インデックス (ブレゲ数字、アラビア数字、ローマ数字、バー、ドット、リーフ、楔形) 針の形状 (スペード、リーフ、バトン、ペンシル、ブレゲ、アロー、ベンツ、コブラ、サーペント、ドルフィン) カレンダー表示(デイト、インダイヤル、ポインターデイト、デイデイト、ビッグデイト、トリプルカレンダー) 秒針の配置(センターセコンド、スモールセコンド、なし) クロノグラフのレジスター配置(縦3つ目、横3つ目、縦2つ目、横2つ目、同軸クロノ) ムーブメント 精度 (クロノメータ規格、GS規格、PPシール) 内蔵ゼンマイの数(1、2) ゼンマイの巻き上げ方式(手巻き、自動巻、手巻き付き自動巻) ムーブメントの振動数(5.5振動、6振動、8振動、10振動) ムーブメントの審美性(ジュネーブシール、PPシール) 二番車の位置(センター、オフセンター) 脱進機(アンクル、コーアクシャル) 緩急調整方式(エタクロン、トリビオス、スワンネック、ジャイロマテックステンプ、マイクロステラナット) ヒゲゼンマイ(平ヒゲ、ブレゲヒゲ) 自動巻ローターの配置(センターローター、マイクロローター、ペリフェラルローター) 自動巻の巻き上げ方式(両方向巻き上げ、片巻き上げ、リバーサー、スライディングギア、ラチェット、スイッチングロッカー、ペラトン) クロノグラフの制御機能(コラムホイール、カム)… Continue Reading →
さて、次はブライトリングーホイヤー連合について紹介をしましょう。 ブライトリングーホイヤーは、時間の計時機能を装備した、クロノグラフを主力とする時計メーカーのなかでは本命でしょう。 ブライトリングは航空時計で有名です。初めて回転計算尺をベゼルに装備したクロノマット(1942)、それを航空時計に応用したナビタイマー(1952)はあまりに有名ですね。 一方、ホイヤーはレース界で有名でした。モナコやカレラ、オータビアなど有名ですね。ホイヤーはクロノグラフに注力するために50年代後半は通常の自動巻のラインを生産終了にしていました。 ところで、彼らは完全な競合会社でした。双方ともにクロノグラフを主力とするメーカーで、完全にラインアップが重なっています。その両者が手を組むことになるのは、やはり新製品開発のコストの問題でした。ブライトリングやホイヤーといえども、一社だけで数年はかかる新しい自動巻クロノグラフを支えるのは簡単ではなかったのです。 当時のジャック・ホイヤーはウィリー・ブライトリングにこう持ちかけたとされています。 「ホイヤーは、アメリカとイギリスで強い。しかしヨーロッパ大陸では弱い。ブライトリングはイタリアとフランスで強い。けれどもアメリカとイギリスではそう目立たない。両者ともに自動巻クロノグラフが必要だ、しかし、どちらとも一社だけで開発するのは難しい、ここで手を組むのは完璧なソリューションなのじゃないだろうか」 こうやってブライトリングーホイヤー連合が誕生しました。特筆すべきは、当初から彼らはターゲットのマーケットを明確に意識していたという点です。 写真は50年代後半のブライトリング ナビタイマー1st、ref.806です。
© 2025 Wristwatchな世界 — Powered by WordPress
Theme by Anders Noren — Up ↑