デファイ・ラボ 発振子の駆動 物体が振動を繰り返すためには、ある一定周期で力を加え続けるシステムが必要である。そのメカニズムは、このデファイ・ラボではどのように行っているのだろうか。 例によってまずは振り子で考えよう。振り子の振れ幅が小さくなってきたとき、振動を継続させるためには重りに力を加える必要がある。機械式時計の場合、それはガンギ車とアンクルの衝突によって行われ、ガンギ車はヒゲゼンマイの往復運動を時計回り一方向の動きに整えるのと同時に、主ゼンマイからのトルクをテンプに伝え、テンプを稼動させ続ける働きも同時に持っている。 デファイ・ラボも機械式時計であるから、発振子の往復運動を時計回り一方向の動きに整えるのと同時に、主ゼンマイからのトルクを「ヒゲゼンマイ」に伝える働きが必要になる。ここではそれを「アンクル部」と呼ぶことにする。下の図では黄色に着色した部分である。元図については、ここを参照いただきたい。 まず、デファイ・ラボの「ガンギ車」とアンクル部のメカニズムは、比較的従来の機械式時計の仕組みに似ている。「アンクル部」には上下一対の爪が見える。これは従来のアンクルと同様の出爪(上部)と入爪(下部)と捉えてもそう大きな間違いではないだろう。次の問題は、「ガンギ車」とアンクル部の爪の衝突から得たトルクをどう「ヒゲゼンマイ」に伝達するか、である。そこにはヒゲゼンマイに接続されたテンワはなく、シリコンで一体成形された発振子があるのみである。それでも発振子のヒゲゼンマイの相当部分にエネルギーを伝達しないと、機械式時計は止まってしまう。 まずは、よくこの発振子を見てみよう。そうすると実はこの発振子、3つに分割されていることが分かる。発振子の「ヒゲゼンマイ」はこの3つの分割部分それぞれに装備されており、またこの分割部分の角度は、駆動できる「振り角(上部青破線)」とされている+-6度よりも小さくなっていることが分かる。ということは、ある分割部の「ヒゲゼンマイ」が6度の往復運動を行うと、その時は必ず両隣の分割部に衝突が起きていることになる。 ということは、アンクル部から「ヒゲゼンマイ」へのエネルギー伝達もまた衝突によって行なわれているのではないか。 つまり、以下のようなメカニズムと考察する。最初に、アンクル部の上部の爪(出爪)との衝突によってエネルギーを得た外周部は、その分割部に接続されている「ヒゲゼンマイ」にエネルギーを与えつつ、次の外周部に衝突する。伝えられたエネルギーは、その分割部の「ヒゲゼンマイ」にエネルギーを与えつつ、次の外周部に衝突する。こうして一回の往路方向のエネルギー伝達が終了すると、今度は「ヒゲゼンマイ」に蓄えられたエネルギーは元に戻ろうと、復路方向の動作を開始する。その復路の振動が終わると「ガンギ車」とアンクル部の下の爪(入爪)が衝突し、往路方向の振動とは逆方向にエネルギーが与えられる。その往復のエネルギー伝達の図を以下に示す。 これが筆者の考えるデファイ・ラボの「ヒゲゼンマイ」へのトルク供与の仕組みである。例によってこれは動画やプレゼンテーションからの類推した筆者の私見である。ここは間違っているのでは、ここはもっとこう考えるべきでは、などご意見のある方はぜひコメントまたはtwitterまでいただければ幸いである。
トルクに関してまとめよう。 そもそも、機械式時計はなぜトルクが大きくなければならないか。それは機械式時計が、その精度をテンプに頼っているからである。機械式時計の場合、主ゼンマイのトルクで最終的にはテンプまで回転させなければいけない。主ゼンマイの周波数(6時間で一回転)から2.5Hzまで増速する場合、54000倍もの増速である。この場合、テンプを回転させるために必要なトルクは、元の主ゼンマイのトルクに対して1/54000以下に減少する。そのトルクである程度の重さを持つテンプを回転させるのであるから、相当のトルクが主ゼンマイには必要となる。表示のための分針と時針とは、その主ゼンマイの回転数に近いところから動力をとっているから、テンプを回すトルクの数千倍のトルクを利用できる。その結果、相当程度に太くて重い視認性のよい針を回転させることができる。しかしながら、いくら機械式時計といっても秒針は細くて軽い。これはトルクが減少した歯車から動力をとらざるをえないからである。 一方で、クオーツ時計の精度は、水晶体の原発振周波数の精度による。液晶でもLEDでも好きな表示形態を選ぶことができる。トルクが必要になるのはアナログ表示、針を回転させたい場合のみとなる。発振周波数の伝達は電気信号で行なわれ、歯車が不要であるため、トルクの増大、減少といったことはない。さらには針を駆動する歯車比に関しても、機械式時計のような制約はない。電気信号で一回、一秒の振動数を作ってから減速して作るのが一般的な構造となるが、減速、増速は好きなように選ぶことができる。モーターの消費電力からくる制約さえ改善されればクオーツ時計のトルクが改善される余地は十分にあるといえるだろう。
一般に、機械式のトルクは大きいから太い針を駆動でき、結果的に視認性が良くなる、クオーツのトルクは小さいから針も細くなり、結果的に視認性が悪くなる、とよく言われる。この一般的な前提をもう一度検証してみたい。 一体全体、アナログクオーツ時計のトルクは本当に小さいのだろうか。Tictacでもザ・クロックハウスでもよいがカジュアルな時計店に行ってみると一見太い針に見えるデザインのクオーツ時計が所狭しと並んでいる。これでクオーツはトルクが小さいから針が細いと機械式時計の趣味の人に強弁されても、ちょっと納得できかねるのではないだろうか。写真は Casio社の G-shockの新製品である。十分以上太い針を駆動できているように思えてしまう。 アナログクオーツ時計の針を駆動するための駆動力に対する一番の制約条件は、針を回転させるために必要なモーターの消費電力にあった。アナログクオーツ時計は、モーターで消費される電力を減らすために、ごく微小な電流で動作する時計用のモーターを使用する。ではそのモーターを改善すればよいではないか。クオーツ時計は電子部品によって構成される。その電子部品を改善すればよいのである。これはその電子部品の製造者なら誰でも考えることで、実際、アナログクオーツ時計のムーブメントのトルクは大きく改善されている。 有名なところではグラントセイコーの9Fムーブメントは通常のクオーツの倍のトルクで駆動できると謳っている。それ以外の広く汎用で使われるムーブメントにおいても、例えばMiyotaのクオーツクロノグラフムーブメントは 1uN・m の分針を駆動できる。クロノグラフ秒針にいたっては 0.4uN・m である。同じくMiyotaの傑作ムーブメント 9015と比較してもそれなりのトルクになってきている。最早,すくなくとも一般的にクオーツのトルクが小さいとは言えなくなってきているのではないだろうか。
一般に大きい、小さいという場合、その比較対象が必要になる。機械式時計のトルクが大きい、という場合は、その比較対象はアナログクオーツ時計になるであろう。世の中にアナログクオーツ時計がなかった時代、機械式時計のトルクが大きいという議論はそもそも成立する要件がなかったに違いない。そこで、アナログクオーツ時計のトルクが小さいということについて考えたい。 一体、アナログクオーツ時計は、なぜトルクが小さいのだろうか。原理的には発振周波数が高く3.2万Hz(一秒間に3万回以上発振する)以上である。これを減速するのであるからトルクは問題ないではないか。その通りである。もし、アナログクオーツ時計の原発振周波数を歯車で伝達するのであればそれはそれで問題はないはずである。ところが、クオーツ時計の場合、伝達機構が異なる。電気信号でこの減速比は伝達されるのである。電気信号による伝達の場合、増速も減速も関係はない。 機械式時計の場合、トルクはその動作の本質である。テンプとテンプに至る歯車を主ゼンマイから回転させるためにはトルクが必要だ。一方でクオーツ時計の本質は電子回路である。歯車は本来必要はなく、バッテリーと電子回路があればよく、その表示形態は自由である。液晶でLEDでもアナログの時分針表示でも好きなものを選ぶことができる。針を回転させることは、できなくはないが必須ではない。つまり、トルクは、クオーツ時計の本質ではないのだ。 ではなぜアナログクオーツ時計で、回転運動させた場合に、得られるトルクが小さいのか。それはクオーツ時計の本質である電子回路の動力源であるバッテリーという制約条件による。バッテリーによって回転運動をさせる場合、その動力源はモーターになる。そしてモーターに流せる電流が大きければ大きいほどトルクを大きくとることができる。ところが電流を流すと、当然ながらバッテリーの消費は早くなる。つまり、ここがクオーツ腕時計の一番大きな制約条件、バッテリーの容量になる。限られた電池容量で2、3年も持たせようと思えば、やはりモーターに使える電流は小さくなる。例えば電池が一週間しか持たないアナログクオーツ時計でよければ、モーターに流せる電流は40~50倍は大きくできるだろうから、太い針を駆動するトルクを得ることは原理的には可能であるはずだ。
今回はトルクの重要性についてです。機械式時計はトルクがあるために大きな針を回すことができるということは聞かれたことがあるでしょう。トルクは重要そうだなぁとは思っても、しかしながら、ではその重要なトルクがあればあるほど高級というわけでもなく、どちらかというと高級時計の中には、ロイヤルオークジャンボなどのように比較的トルクが小さいものも多い。しかしながら、それら高級機の中ではロイヤルオークジャンボのトルクは大きいほうである、などと聞いてくると分けが分からなくなってきます。 そもそもトルクというファクターは、なぜ機械式時計で重要なのか。それは機械式時計がゼンマイで動作し、その動作を歯車で増速して伝えるからこそ、重要になってくるのです。ここに以下の点でトレードオフが出てきます。 ゼンマイの長さと動作時間: ゼンマイが解けていきながら動作する以上、ゼンマイの長さによる動作時間の制限がかならずあります。長く動作させたい場合には、トルクは小さくなります。 トルクの大きさ自体の制約: ゼンマイから見ると、ギア比はかならず増速になります。増速の場合、伝えられるトルクは原理的にそこで減少します。車の場合、ギア比がLの場合はトルクが大きいですが、5速、6速の場合はトルクは小さくなります。ギア比を増速すればするほどトルクは小さくなるのです。車の場合はもともとかなり回転数の高いものを減速して巨大な車体を動作させるトルクを得るのですが、時計の場合はもともと一番遅いゼンマイの回転数から増速して脱進機の速度にしていくので、必ず主ゼンマイのトルクから減少します。 精度と脱進機の速度: 高精度を求めれば求めるほど、脱進機の速度は上がる傾向にあります。ヴィンテージ時計は5.5振動または6振動、近年では多くの時計が8振動。場合によっては10振動というものまであります。脱進機の速度を上げれば精度を得やすくなりますが、その分増速の度合いも増えますので、トルクもより必要になります。 結局、ゼンマイをできるだけ消費せずに、しかも大きな針を動作させたい場合はゼンマイを格納する箱が大きくなってしまいます。そうなってしまってはとくにドレスウォッチに代表とされる高級時計とはいえなくなってしまいます。 そこで、限られた体積に含まれるゼンマイのトルクを有効活用するために、伝達ロスをできるだけ減らすために、高級時計の歯車は丁寧に磨いてありますし、ゼンマイの体積とトルクによって動作できる針および機能のバランスを巧みにとってあるのです。
さて、クオーツ時計と機械式時計とで、大きな違いがあることは分かりました。では、その違いをより詳しく見ていくことにしましょう。クオーツ時計と機械式時計、一番の大きな違いは、動力源にあります。すべてのモノが機能する、動くためにはそれに相当するエネルギーが必要です。クオーツ時計の場合、電気エネルギーという極めてユニバーサルな動力源を使用します。そのため、動力源と機能ブロックとは完全に分離できます。もし壁のコンセントからエネルギーを取得できるのであれば、クオーツ時計は動力源の問題はほとんどなくなり、ほぼ無制限に動きつづけることができることになりますし、どんな大きな針も駆動できることになります。これは動力源と機能が分離できるからです。 一方で、機械式時計はゼンマイを動力とします。ゼンマイというものはユニバーサルな動力源の一つではありますが、電気ほどユニバーサルではなく、機械式時計では、動力源と機能とが未分化です。つまり、ゼンマイで歯車を駆動し、歯車の歯の数の比で、所望の周波数を生成します。材質が同じであれば、厚くて幅広のゼンマイであればあるほど、大きな歯車や針を駆動できます。その一方で、ゼンマイの長さは駆動時間に直接かかわってきます。ゼンマイをおさめる箱の体積の問題がありますので、厚くて幅広のゼンマイは、短かい駆動時間となります。一方で、薄くて幅が狭いゼンマイは長寿命ではありますが、より小さな歯車、または軽い針しか駆動できないことになります。 機械式時計の設計はまずこの部分をどう最適化するかということに関ってきます。一般的に高級時計は、薄型です。外形寸法が薄いということは、薄いゼンマイを使わなければならず、結果的に比較的弱いトルクになり、より小さい針しか駆動できないことになります。そのため、歯車の歯をきちんと磨くことで、トルクのロスを極力減らすといった努力が高級時計にはなされることになります。 画像はロイヤルオークジャンボ。薄型自動巻の最高峰の機械を内蔵します。
仕上げの話、続きます。ここでいう仕上げとは、職人による磨き工程のことを言います。人の手による仕上げ工程および検査工程を経ることで、時計はいっそう工芸品としての価値を増します。 人間の五感というのは、ものすごい繊細なものです。一番分かりやすいのは視覚ですね。いま、昔のアナログTVを見ると、その解像度の低さに唖然とすることは間違いないでしょう。最先端ではハイビジョンより解像度の高い、4000×2000(4k2k)の解像度のTVなども実用化されようとしていますが、すごいのはそのTVよりもその違いを認識できる人間の目だと思います。触覚もすごいです。町工場の金属職人は、ミクロン単位(1000分の1ミリ)で平面を出せる人がいたといいます。 そういう、鍛えられた目と手を持つ職人によって、時計は仕上げられます。一流の職人の手間がかかっていればいるほど、繊細できれいな仕上げになります。そして、人の手間がかかっていればいるほど、時計は量産が難しくなり、工芸品となっていきます。 その昔、時計が限られた人たちのものだった時代、時計はその見えない部分ムーブメントの部品一つ一つまで職人によって丁寧に磨かれていました。一つには、ムーブメントの美観というのもあったのでしょうが、実用的な意味もありました。工作精度も今のようではなく、部品一つ一つを磨いて噛み合わせを調整する必要もあったのでしょうし、一つ一つの部品を磨くのと磨かないのとでは、摩擦係数が違い、精度が違っていたのではと思えます。また40年代以前、当時のスチール製のゼンマイは今よりはるかに切れやすく、ゼンマイから出力されるトルクを均等に使うためにも、その負荷である歯車やその機構を磨いて調整するのは意味があったのでしょう。 今では当時ほどの意味はないでしょうが、やはり最終工程で職人の手を経ることによって、完成度は上がります。 画像は、友人のパテックフィリップの年次カレンダー5205です。今度は側面からです。側面から見ると、ケースの仕上げの良さがまたよく分かります。上方に絞ったベゼル、一部の隙もなくまるで一体成形してあるかのようなケースへの接続。ケース側面の柔らかい鏡面仕上げ。また、この5205はラグに特徴的な仕上げがしてあります。パテックフィリップはすべてのケースを鍛造(素材を型で抜いて圧力をかけ、熱処理という工程を繰返す製法)で作ります。これは量産に向いた方式で、パテックでは今まで作ったすべてのケースの型を保存しているそうですが、このラグ部分は鍛造工程後にさらに削り出し工程で行っています。そして最後に職人よる磨き仕上げ工程を経て、このようなケースが出来あがります。
おおよそ機械式時計とクオーツ時計の差が出揃いました。再度まとめてみましょう。 精度については、機械式時計はいわれているほど悪くはありません。一日10秒~20秒程度というのは十分実用に耐える精度で、原型の誕生からおおよそ300年以上たつゼンマイ時計という古い仕組みの機械としては驚異的な精度と思えます。また、機械式時計はトルクが大きく、大きく見易い針を使えます。ところで一方、精度をだすための仕組みを一秒に数回も回転するアンクル型脱進器に頼っており、その上トルクが大きいために部品の摩耗が大きくなります。そのため定期的なオーバーホールが必須になります。 一方、クオーツ時計はトルクが抑え気味にしてある上に、一秒間に数回も回転するような機械部品がありません。そのため、部品の摩耗が機械式時計に比べて小さく、オーバーホールの必要性がそう高くはありません。オーバーホールするのが望ましいのは間違いありませんが、電池交換だけでそれなりに長い間正確に動作することが多いのはそのためです。 さて精度、視認性と少し差はありますが、機械式時計とクオーツ時計と比べたときに、一番の大きな違いはやはりこのメンテナンス性でしょうか?機械式時計はメンテしないとただの鉄のカタマリです。ところが一方、定期的にメンテナンスさえしてあげれば50年以上前の時計でも十分実用できる精度で動き出します。 画像は1950年代のオーデマピゲの名作、VZSScのムーブです。ムーブメントの上部にテンプが見えます。
機械式時計のどこがいいのか? その12 クオーツ時計は、機械式時計と比較してトルクが弱く、針のデザインに制約があるという話でした。トルクという量は、回転軸からの距離と重さを掛けたものになります。時計でいえば、針が長ければ長いほど、重ければ重いほど、運針には大きなトルクが必要になります。ミヨタのムーブ同士の比較では、分針の運針トルクに3倍以上の差がありました。0.1g以下の針で3倍というのはかなり大きな差です。昨今のわりと大きめのクオーツ時計の針が視認性を確保できる範囲で薄い針を使ってあり、またできるだけ短い針を使うようにデザインされているのが分かってきたような気がします。 画像は セイコーブライツのエグゼクティブ電波ソーラーとアナンタのメカニカルクロノグラフです。クオーツの視認性も悪くはないものの、やはり針の存在感の違いは歴然としています。 ところで、トルクが弱いことは悪いことばかりではありません。機械式時計は、トルクが強いそのために機械の摩耗が激しく、またとくに摩耗する箇所にはその対策のためのルビー(石)が必要になります。定期的なオーバーホールは必須です。一方、弱いトルクで少ない部品を駆動するクオーツは、オーバーホールしなくても電池交換のみで10年使えているという例も少なくありません。 時折、機械式時計は電池を使わないからエコだという言い方をされます。しかし、これは機械式時計がきちんとメンテナンスされていることが前提です。メンテされていない機械式時計は、ただの鉄のかたまりです。電池さえ交換すれば使い続けられるクオーツ時計とどちらがエコか、きちんとメンテナンスすることを前提にしないと、いちがいには言えないような気もしてきます。
さて、クオーツ時計のトルクが分かったところで、機械式時計のトルクとの比較をしましょう。今回もシチズンの子会社、ミヨタのムーブメントを参照します。取り上げるのは、Cal. 9015、ミヨタが30年ぶりに開発したシチズンの機械式時計のムーブメントです。広く使われているETA2824-2の置き換えとしても使えることをターゲットとしているようです。Cal.9015のムーブ径はETA2824-2と同じ25.6mm、厚さはすこし薄い3.9mm。42時間のパワーリザーブ、8振動、デイト、秒針停止機能と十分なスペックです。このムーブをチューンしたものは、ザ・シチズンの機械式時計にも用いられています。 Cal.9015 とETA2824-2との比較をまとめてみると以下になります。 さて、このCal.9015 の針を駆動するトルクに関する仕様は以下のようになっています。 これを見ますと、分針で1.25uN・mという駆動力が定義してあります。これはクオーツのOS-21(0.4uN・m)のトルクと比較すると3倍以上です。トルクが3倍ということは、長さが同じであれば3倍の重さの針、重さが同じであれば3倍の長さの針を使えるということになります。 画像はザ・シチズンNA0000-59Eです。やはり3倍のトルクで針を駆動できると、針の印象がかなり違うように見えます。
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