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ジェラルド・ジェンタ ー デザインルールの創造

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本稿は、以下の2009年に行なわれたジェラルド・ジェンタへのインタビュー記事の翻訳です。ジェンタは2011年に亡くなっていますから、このインタビューは、ジェンタの晩年の貴重なインタビューだと思えます。

機械式時計のどこがいいのか? その17

今回は、「実用時計」について考えてみます。例えば、ロレックスは最高の実用高級時計である、という言い方をされます。でもよくよく考えてみると、「実用時計」、これって不思議な単語ではないでしょうか?実用されない時計というのはそもそもあるんでしょうか?しかしながら、実用時計という言い方がある(英語にも同じような単語があるようです)からにはその対極の概念としてコレクション時計が存在する、あるいは、コレクションまたは工芸的価値のあるものが「時計」というカテゴリーには存在するということになります。 つい先立ってのオークションでは、ブレゲの懐中時計が二個6億円で落札されました。また、1943年製のパテックフィリップの純金製の永久カレンダー腕時計が2010年当時5億円で落札されたこともあります。これらは博物館で飾られる類のものでしょうから、実際に腕につけて使うことはないでしょう。まずこれらは純然たるコレクション時計であるといって間違いないと思います。とすると腕時計には、少なくとも実用して使われる時計と、コレクションをして楽しむ時計という二つの種類が存在することになります。 次は「実用高級時計」です。これもまた不思議な単語です。実用高級時計というものがあるとすると、実用中級時計、実用低級時計というのが存在してもおかしくないです。しかし、これらの単語はあまり聞きません。かわりに、ミドルレンジの機械式時計、低価格帯の腕時計という言い方はよく聞きますから、ここでの「高級」というのは、価格のことを言っているんじゃないかと考えてまあ間違っていなさそうです。 ここで冒頭の「ロレックスは最高の実用高級時計である」というフレーズをリフレーズすると、「ある程度高価格帯の実用に供される時計のなかでは、ロレックスは最高である」ということになります。おもしろいですね。高い時計が実用上いいというわけでは必ずしもない、というのが、この言い回しにも表われています。高価格帯の時計には、実用というよりコレクションとして楽しむ、審美性を楽しむことを目的としている場合があると捉えることも可能です。 さて画像は、ギャレットのExcel-O-graphです。MINT状態のこの時計は、私の「コレクション時計」です。ほとんど外に連れ出しません。1960年代後半の製造で、43mmという大振りなケースに名機エクセルシオパークを搭載しています。この時計がいいのは、航空計算尺を供えたそのデザインと大きさ、それとやはりカラーリングでしょうか。5分ごとに赤く塗られた30分計と赤いクロノグラフ秒針、センターは濃いインディゴブルー、 分秒目盛りは白でプリントされ、ゴチャっとしがちな文字盤でもしっかり視認性が確保できるようになっています。ケースの仕上げなどは、それはパテックなどと比較するとお世辞にもよいとは言えませんが、回転計算尺を供えた航空時計としては、必要十分に堅牢に仕上げてあります。 かつてのクロノグラフの名門として有名なギャレットですが、現在でも会社として存続しています。最近ではフライトオフィサーのミュージアムエディションなどを出したりしています。ウェブページは、 http://www.galletwatch.com/ です。

機械式時計のどこがいいのか? その15

機械式時計の位置付け、構成要素、クオーツとの比較までを見てきました。さていよいよ本題に入れる準備ができてきたようです。では機械式時計というのは、いったい、どこがいいんでしょうか? 機械式時計は、トルクが大きいために、見栄えのいい大きい針を回せます。クオーツ時計と比較すると、デザイン的には柔軟性があるといえるでしょう。また雷などの電気ショックに強い点も優位です。しかし、明らかに優位にあるのはそのくらいではないでしょうか?たしかにクオーツ時計の部品保有年数はそんなに長くはないですが、部品がなくても電池交換さえ可能であれば、少なくともそれなりの期間、10年程度は使えます。普通のモノで10年使えれば十分いいのではないでしょうか。 一方できちんと作られている機械式時計は、保守さえ行えば50年、60年と使えますが、その保守には1ヶ月程度の時間および数万円~場合によっては数十万円の費用が必要になってきます。 そこまでして保守をして、ただ時間を計測するというツールのために労力を費すのは何故なんでしょうか?そこまでの価値があるという理由はいったいどこにあるんでしょう? 画像はロンジンL990。この時計の素晴しい点はそのムーブメントにあります。現在のロンジンは自社ではムーブメントを作っておらず、スウォッチグループの中堅的なポジションで良質な時計をリリースしています。しかし往年のロンジンは一味違いました。ロンジンL990は、70年代、クオーツショックの真っ只中にリリースされたロンジン渾身の作、最後の自社製ムーブです。クオーツ同等の精度を出すことを目標に開発され、機械式時計で精度を出すために、ツインバレルを採用しています。つまり、普通の時計はゼンマイが一個なのですが、この時計にはゼンマイが二個入っています。他にも、わずかな腕の動きで巻き上げるダイナミック・アイドリングや秒針停止(ハック)機構、日付のクイックチェンジ、カレンダー早送り機構など、さまざまな機能をわずか2.96mmの薄さに収めています。 手に持つと、ずっしりとした重みが伝わります。現在ではこのムーブはレマニア8810として引き継がれており、ブレゲなどの高級ラインなどに使われています。初期のロジェに多く使われているRD57のベースもこのムーブです。

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