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本物のス丶メ その8

さて前回までに「時計」の値段は下っているということが分かった。少なくとも一般的な感覚では、昭和40年代中頃から現在の令和元年くらいまでの50年に時計の価格はおおよそ1/3 になっている。昭和40年代、戦後20年を経、もはや戦後ではないと言われ各家庭にモノクロTVガ普及した時代である。そのころの時計はやはり高かったのである。 よく「本物は高くて買えないからニセモノでいい」という人がいる。 だが実際には、本物は高くなっていないのである。本物が欲しいのであれば、日本にはほんとうに様々な選択肢がある。たいていの地元には一つや二つの時計店があるし、少し出掛ければデパートや量販店がある。そこで偽物をつかまされることはまずない。 本物が欲しいのであればどこでも行って本物を買えるのこの日本において、わざわざ正規の流通ルートでは入手できない偽物をどこからか入手して、その偽物を自分の身をつけようというのであるから、価格はともかく、手間は圧倒的にかかっているわけである。 では、そこまでして「高くて買えない本物」というのはなんでろうか。 ここである仮説をたてたい。本物が簡単に入手できる日本において、高くて買えない本物というのはいわゆる「ブランド品」ではないだろうか。 次から、ではブランド品は本当に高いのか、という検証を行いたい。 今回の時計はセイコーエクスプローラとも言われる Apinist。もちろん本物である。     5

本物のス丶メ その7

さて、本物の価格は本当に高いのか、それを検証中であった。 前回、時計の価格は下がっているのではないかという検証を行った。それをもう少し分かりやすくしてみたい。以下に、自動車および腕時計の物価指数を総合指標で正規化した図を示す(2015年=100)。 この図は、ある一般物価に対して、2015年と比較して、過去どのくらい割高/または割安と感じていたかおおよその感覚を示していると考えることができる。例えば自動車の場合、1970年当時は、今と比較すると200%、つまり倍くらいと感じていたということが言えるだろう。腕時計の場合は同様に3倍程度と感じていたと考えることができる。 1970年というのはクォーツ革命の翌年であり、まだクォーツ時計はさほど普及していない。つまり、この1970年の時計価格はほぼ機械式時計の価格であり、2015年度の統計はクォーツ時計の価格ということになる。そしてこの二つを比較してみることにより、時計の価格感覚は1/3になっているいうことができそうである。世の中で信じられている通り、1969年のクオーツ革命は明らかに時計の価格を下げたのである。 ところがこうなると、時計の価格が下っているのにもかかわらず、「本物の価格が高いから買えない」という人が増えている、ということになる。どうも変ではないだろうか。 今回の時計はオーデマ・ピゲの当時世界最薄のパーペチュアルカレンダー自動巻モデルである。1978年、クォーツショックの真っ只中にリリースされたオーデマ・ピゲの意欲作で、ジャガールクルトの名作キャリバー920をベースにしたムーブメントは、パーペチュアルカレンダーかつ自動巻でありながら厚さ 4mm を切っていた。本個体は、2019年のAPのイベントで展示されていた個体である。

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