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Tag 垂直クラッチ

機械式時計のどこがいいのか? その27

随分と久し振りですが、今回は、分針の針飛びの話、その続きをしましょう。機械式時計は、普通のクォーツ時計と違って、使用上の注意があります。かなり高価なのに、その上いろいろと気を使わないといけない、それが機械式時計なのです。 今回取り上げるのは、ブルガリの名機、ディアゴノ303です。ジュエラー、ブルガリは最近は時計にも力を入れていますが、このディアゴノ303はクロノグラフのフラッグシップモデルです。そしてベースのムーブメントはこれも名機のフレデリック・ピゲ(FP)の1185です。FP1185は、薄型クロノグラフを目指して設計してあり、高級クロノグラフに大変よく使われています。この薄型化のために、セイコーが開発した垂直クラッチ機構を、現代的に再設計したムーブメントとしても有名です。ブルガリは、このムーブメントをもとにチューンを施しキャリバー BVL303としてディアゴノ303に搭載しています。スペックは、21600振動(3Hz)、37石、直径 26.2mm、高さ5.5mmと、わずか5.5mmに3レジスタのクロノグラフ、デイト機構を組み込んであります。 さて、この高級ムーブメントにも分針あわせのときに針飛びが起きます。11時5分にあわせようと思ってリューズを引きます。そして押しこむと、見事に分針が1分ほど動いてしまいました! これはブルガリだけでなく、FP1185をベースに採用している高級クロノグラフについての、ムーブメントの癖とでもいうべきものです。ちなみに実は、筆者はこのFP1185ベースのクロノグラフの分針調整が得意です。コツは、戻しあわせで、そっと押しこむことです。 ムーブメントの癖を見抜いて、使いこなすというのも機械式時計の楽しみの一つと言えるかもしれませんね。

機械式時計のどこがいいのか? その3

さて機械式時計の大分類はできました。引き続き、その機械式WristWatchに含まれる機能を分類していきましょう。 時計ケースおよび外装 ケースサイズ(幅20mm~50mm、厚さ7~15mm) ケース形状(ラウンド、角型、樽型、長方形、クッション、楕円形) ケース材質(ステンレス、プラチナ、イエローゴールド、ホワイトゴールド、レッドゴールド、チタン、金メッキ、金張リ、セラミック、アルミニウム、ザリウム) 防水機能(非防水、日常生活防水、日常生活強化防水、空気潜水、飽和潜水) 対磁能力(JIS一種、JIS二種) ケース裏蓋(スナップバック、スクリューバック、一体式、シースルーバック) ケース仕上げ(ポリッシュ、ヘアライン) ベゼル形状 (フラット、コインエッジ、ステップド、両方向回転式、片方向回転式) ガラスの材質(プラスティック、ミネラルガラス、サファイアガラス) ガラス形状(平面、ドーム) ガラスコーディング(コーディングなし、片面無反射コーディング、両面無反射コーディング) リューズの形状(オニオン、ラウンド、ストレート、ファセット) ベルト材質(カーフ、クロコ、リザート、ウレタン) バックル形状(尾錠、3つ折れ、観音開き) 文字盤 表示機能(時分秒、日付、曜日、月齢、GMT機能、クロノグラフ機能、ワールドタイム、永久カレンダー) 色(白、マットブラック、ミラーブラック、ブルー、レッド、グラデュエーション) 材質(メタル、エナメル、シェル、メテオライト) 装飾(ギョーシェ、タペストリー、スケルトン、インダイヤルのレコード溝) インデックス (ブレゲ数字、アラビア数字、ローマ数字、バー、ドット、リーフ、楔形) 針の形状 (スペード、リーフ、バトン、ペンシル、ブレゲ、アロー、ベンツ、コブラ、サーペント、ドルフィン) カレンダー表示(デイト、インダイヤル、ポインターデイト、デイデイト、ビッグデイト、トリプルカレンダー) 秒針の配置(センターセコンド、スモールセコンド、なし) クロノグラフのレジスター配置(縦3つ目、横3つ目、縦2つ目、横2つ目、同軸クロノ) ムーブメント 精度 (クロノメータ規格、GS規格、PPシール) 内蔵ゼンマイの数(1、2) ゼンマイの巻き上げ方式(手巻き、自動巻、手巻き付き自動巻) ムーブメントの振動数(5.5振動、6振動、8振動、10振動) ムーブメントの審美性(ジュネーブシール、PPシール) 二番車の位置(センター、オフセンター) 脱進機(アンクル、コーアクシャル) 緩急調整方式(エタクロン、トリビオス、スワンネック、ジャイロマテックステンプ、マイクロステラナット) ヒゲゼンマイ(平ヒゲ、ブレゲヒゲ) 自動巻ローターの配置(センターローター、マイクロローター、ペリフェラルローター) 自動巻の巻き上げ方式(両方向巻き上げ、片巻き上げ、リバーサー、スライディングギア、ラチェット、スイッチングロッカー、ペラトン) クロノグラフの制御機能(コラムホイール、カム)… Continue Reading →

機械式時計のどこがいいのか? その2

さて、機械式時計の「どこ」がいいのか?この「どこ」を切り分けるために、まずはここでいう「機械式時計」の位置付け、カテゴリー分けからはじめましょう。日本語では、機械式時計は、明らかに「時計」のカテゴリーです。つまり教室に掛けてある掛け時計や、札幌の時計台、目覚し時計、日時計や水時計も時計のカテゴリーです。膨大なモノを含むカテゴリーですね。 一方、英語ではどうでしょう。実は日本語でいう「時計」に、1:1で対応する英単語はありません。四捨五入しておおざっぱにいえば、「時計」=クロック(clock) + ウオッチ(watch)です。英語では、クロックとウォッチとは別のカテゴリーです。日本語では簡単に「おじい~さんのとけい~」と言えて、それが掛け時計でも懐中時計でも一向に構いませんが、英語では「おじい~さんのクロック~」(掛け時計の場合)または「おじい~さんのウォッチ~」(懐中時計の場合)と厳密に指定する必要があります。個人が身につけられていつでも時刻を知ることができる道具に、例えばポータブル・クロックではなく、わざわざ「ウォッチ」という特別な名前がつけられていることから、当時はこの技術がかなり革新的と捉えられたということが分かります。 一方日本語では、人間の活用する形態による分類というより、活用されている技術による分類となっています。つまり、掛け時計だろうが、腕時計だろうが、どちらにしても時間を計る道具でしょ?というスタンスです。 これは実は大きな違いですね。英語圏では、時間をいつも正確に読みとりたいというニーズがとても高かったことに対して、日本語圏では、そのニーズはそれほど高くはなかったとも言えます。もともと米の飯をお腹いっぱい食べることを目標に田畑を耕していた我らが先祖たちは、おてんとさまが真ん中あたりだから昼にしよう、で済んでいたのかもしれません。 しかしながら結果的に便利なことに日本では、セイコーやシチズンが「時計メーカー」として腕時計も掛け時計も作れます。しかし、英語圏では「時計メーカー」という便利な概念はありません。あるのは、ウォッチメーカーとクロックメーカーです。ロレックスは ウォッチメーカーです。クロックメーカーとしては例えば エルウィン・サトラー など、まったく別の会社になります。 ということで、ここで扱うのは、WristWatchの機械式時計の話になります。 写真は新型のロレックスデイトナ。ムーブメントはロレックス自社製のCal.4130です。 クロノグラフの動力伝達にはセイコーが世界で初めて開発した垂直クラッチ方式を採用しています。

最初に自動巻クロノグラフを作ったのはどこか?その18

最初に自動巻クロノグラフをリリースしたのは、どこのメーカーだったのか、まとめです。 ゼニス/エルプリメロ…ゼニスのウェブでは、「完全一体型のコラムホイール式自動巻クロノグラフ・ムーブメントを開発した最初の時計メーカー」と主張しています。どうもライバル のホイヤーーブライトリング(カム式、モジュール型クロノグラフ)に対して「難しいことをきちんとやったから時間がかかったんだ」という負けた怨念が垣間みえるようです。たしかにエルプリメロの完成度は高く、現在まで通用する基本設計がなされていました。 ホイヤーブライトリング/キャリバー11…ホイヤーのウェブでは、初の自動巻クロノグラフムーブメントを開発、発表となっています。ブライトリングのウェブでは、共同で自動巻クロノグラフを開発した、となっています。どちらかも余裕のコメントですね。やはり時計は量産できてはじめて製品といえるのでしょうから、世界で一番早く自動巻クロノグラフを製品化した、またそれを分かるようにきちんと発表もしているという自信があふれているように見えます。キャリバー11自体は、マイクロローターの巻上効率が悪く、すぐにキャリバー12へと更新されていますが、このモジュール構成は後のムーブメントに大きな影響を与えました。現在、同様のモジュール構成をとった自動巻クロノグラフムーブメントとしては、有名なバルジュー(ETA) 7750があります。 セイコー…発表はホイヤー-ブライトリングに遅れること二ヶ月の5月です。しかしながらホイヤーープライトリングのキャリバー11の量産が夏であることを考えると、ほぼ間違いなく量産を開始したのは一番早いです。69年3月という量産初期のシリアルの時計がけっこうウェブで見つかります。クロノグラフのピラーホイール制御、世界初の垂直クラッチの採用と設計にも見るべきポイントがあります。この垂直クラッチは近年のクロノグラフムーブメントに大きな影響を与えています。有名なところでは、ロレックスのデイトナ4130にも採用されています。 1969年1月10日 ゼニスがエルプリメロの試作品をスイスの特定のプレス向けに発表 1969年3月 セイコーがセイコースポーツファイブ6139を量産開始 1969年3月3日 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11を大々的に発表(スイス、ニューヨーク) 1969年4月 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11をバーゼルで発表 1969年5月 セイコーがセイコースポーツファイブ6139を発売 1969年夏 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11をデリバリー開始 1969年10月 ゼニスがエルプリメロをデリバリー開始 この稿、これで終わります。

最初に自動巻クロノグラフを作ったのはどこか?その15

ではセイコーのクロノグラフはどうだったのでしょう?もう一度年表を並べてなおしてみましょう。 1969年1月10日 ゼニスがエルプリメロの試作品をスイスの特定のプレス向けに発表 1969年3月 セイコーがセイコースポーツファイブ6139を量産開始 1969年3月3日 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11を大々的に発表(スイス、ニューヨーク) 1969年4月 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11をバーゼルで発表 1969年5月 セイコーがセイコースポーツファイブ6139を発売 1969年夏 ホイヤーーブライトリングがキャリバー11をデリバリー開始 1969年10月 ゼニスがエルプリメロをデリバリー開始 こう並べてみるとどうですか? どうも一番最初に自動巻クロノグラフを作ったのはセイコーのような気がしてきませんか? ただし、残念なことにセイコーの発表は5月でした。これではセイコーの自動巻クロノグラフは、極東の島国でひっそりと量産が開始され、ひっそりと島国向けにアナウンスされた、ということになってしまっても仕方ないかもしれません。 セイコーの自動巻クロノグラフは、セイコーファイブというローコストの時計をベースにしていましたが、設計にも見るべき点がいくつかあります。クロノグラフの制御にはピラーホイールを採用しており、また垂直クラッチを世界で初めて採用しました。この垂直クラッチ、いまではロレックスのデイトナが採用していることでも有名ですが、その世界初の採用はこのファイブスポーツです。 画像は一番初期のプロダクションロット、1969年3月のセイコースポーツファイブです。それなりに数がありますので、やはり量産に成功した後でアナウンスした、と見るのが自然と思えます。

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