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機械式時計のどこがいいのか? その30

腕時計の針飛びについて、もう少し考えてみます。これは実はけっこう面白い話題かもしれません。まず、一口に腕時計といいますが、おおよそ大別して次の三つの流れがあるように思えます。 貴族が使っていた、高級宝飾品としての系譜。 実用時計としての系譜。腕時計が初めて使われたのはイギリスのボーア戦争だと言われています。正確な時間を知るというのは軍隊では生死にかかわる重大時です。当時は一般の兵士にまでは時計はいき渡らず、時計を所持していたのは士官のみでした。 汎用品(コモディティ)としての系譜。クオーツ登場以降、腕時計のコストが革命的に下落してからの系譜。使い捨てをしたほうが精度もコストもリーズナブルであるということで生まれたディスポーザルウォッチの系譜。 やはり時代とともに、「時を知る」という営みはコモディティとしてありふれたものになってきています。現代では正確な時を知るためには、時計ではなく携帯という方も多いことでしょう。かく書いている筆者も、電車のホームで、クオーツ時計の時間に自分の左腕の時計の時間をあわせたりしています。 ところで身の回りのどんな時計でも、「時刻をあわせる」、さほど頻繁ではないにしても、これは必須の作業です。その必須な作業をするときに針がジャンプしてしまう、これはなかなかストレスフルですよね。実用時計や汎用品(コモディディ)でこのような動作を起していたら、毎日使うのはちょっと辛くなるかもしれません。しかしその一方で高級品としての時計、毎日使うことを想定されていない時計の場合は、まあ我慢できるかもしれません。つまりは時計でいう高級時計、宝飾時計は、必ずしも実用的な価値に優先順位をつけて開発されているというわけではない場合があるということでもあります。針飛びという現象だけではなく、防水性能を見てみても、そのことは分かるかもしれません。

機械式時計のどこがいいのか? その17

今回は、「実用時計」について考えてみます。例えば、ロレックスは最高の実用高級時計である、という言い方をされます。でもよくよく考えてみると、「実用時計」、これって不思議な単語ではないでしょうか?実用されない時計というのはそもそもあるんでしょうか?しかしながら、実用時計という言い方がある(英語にも同じような単語があるようです)からにはその対極の概念としてコレクション時計が存在する、あるいは、コレクションまたは工芸的価値のあるものが「時計」というカテゴリーには存在するということになります。 つい先立ってのオークションでは、ブレゲの懐中時計が二個6億円で落札されました。また、1943年製のパテックフィリップの純金製の永久カレンダー腕時計が2010年当時5億円で落札されたこともあります。これらは博物館で飾られる類のものでしょうから、実際に腕につけて使うことはないでしょう。まずこれらは純然たるコレクション時計であるといって間違いないと思います。とすると腕時計には、少なくとも実用して使われる時計と、コレクションをして楽しむ時計という二つの種類が存在することになります。 次は「実用高級時計」です。これもまた不思議な単語です。実用高級時計というものがあるとすると、実用中級時計、実用低級時計というのが存在してもおかしくないです。しかし、これらの単語はあまり聞きません。かわりに、ミドルレンジの機械式時計、低価格帯の腕時計という言い方はよく聞きますから、ここでの「高級」というのは、価格のことを言っているんじゃないかと考えてまあ間違っていなさそうです。 ここで冒頭の「ロレックスは最高の実用高級時計である」というフレーズをリフレーズすると、「ある程度高価格帯の実用に供される時計のなかでは、ロレックスは最高である」ということになります。おもしろいですね。高い時計が実用上いいというわけでは必ずしもない、というのが、この言い回しにも表われています。高価格帯の時計には、実用というよりコレクションとして楽しむ、審美性を楽しむことを目的としている場合があると捉えることも可能です。 さて画像は、ギャレットのExcel-O-graphです。MINT状態のこの時計は、私の「コレクション時計」です。ほとんど外に連れ出しません。1960年代後半の製造で、43mmという大振りなケースに名機エクセルシオパークを搭載しています。この時計がいいのは、航空計算尺を供えたそのデザインと大きさ、それとやはりカラーリングでしょうか。5分ごとに赤く塗られた30分計と赤いクロノグラフ秒針、センターは濃いインディゴブルー、 分秒目盛りは白でプリントされ、ゴチャっとしがちな文字盤でもしっかり視認性が確保できるようになっています。ケースの仕上げなどは、それはパテックなどと比較するとお世辞にもよいとは言えませんが、回転計算尺を供えた航空時計としては、必要十分に堅牢に仕上げてあります。 かつてのクロノグラフの名門として有名なギャレットですが、現在でも会社として存続しています。最近ではフライトオフィサーのミュージアムエディションなどを出したりしています。ウェブページは、 http://www.galletwatch.com/ です。

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