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機械式時計のどこがいいのか? その19

機械式時計の位置づけ、クオーツ時計との比較、実用時計とコレクション時計と見てきまして、ようやく本題に近づいてきました。機械式時計のどこがいいのか、今回からのテーマは「外装や機械の仕上げ」です。「仕上げ」とは一言でいえば、職人が手間暇をかけてモノを磨き上げる工程、といってもいいでしょう。腕のいい職人が丹精こめて磨き上げた品物は、時計であれ靴であれ器物であれいいものです。いいモノを身につけると、気分まで変わってきますよね。 ところで、いいモノにするために職人が手間暇かけることができるには、何が必要でしょう?まずはその職人の基礎的技量、その技量を磨く年月がなければ、モノになりません。しかしながら、職人が修行できるそのためには、そのモノが世の中に受け入れられ、ある一定程度、常に需要があること、つまりお客が必要です。 いくら優秀な職人が長年修行しても、それが世の中に認められず、作品が二束三文でしか売れないとなればその職人はおそらく廃業するしかないでしょう。職人は芸術家とは違います。お客あっての職人です。芸術家 というのは、認められようが認められなかろうが、売れようが売れまいがおかまいなしに自分の好きなことをただひたすら追求する人たちのことでしょう。一方、職人は、そのモノが常に一定の需要があるということを前提にして生活の糧を得ています。その仕事は細かく分業されているのが常です。 京うちわという工芸品があります。比較的廉価なものもありますが、最高級のものは、扇ぐというよりは飾って清涼感を演出するためのものです。柄の部分とうちわ本体は別体式になっており、うちわ部分は細い繊細な竹で骨組が組まれ、透けて見える骨組のその上に花鳥風月の彩を添えています。高級なものは8万円以上します。竹の骨をつくる竹職人、団扇を張りあわせる職人、細工職人などによる手作業の連携で、出来上がりに一年以上かかることもあることを考えると、その値段もまあ納得です。画像は京うちわ阿以波さんからです。 腕時計の世界もやはり職人の分業化が進んでおり、ムーブメントの専業会社、モジュール会社、針を作る会社、文字盤を作る会社、ガラス会社、ケース会社などに細かく分かれてそれぞれの腕を競っています。 腕時計の場合、特にムーブメント製造部門を持つ時計会社のことをマニュファクチュールということがあります。もちろんムーブメントは、時計の主要な部品です。しかし、時計の生産には他にも多くの部品が必要で、マニュファクチュールといえども、多くの協力会社の存在を抜きに時計は生産できません。ムーブメントの主要部品、ヒゲゼンマイは ニヴァロックス社製であることが多いですし、ロレックスのサファイアガラスは日本製です。 画像は、パテックフィリップの年次カレンダー5205です。これは私の友人の所有です。年次カレンダー以上になると、パテックのケースの仕上げは明らかに群を抜いています。特にケースの曲面仕上げが素晴らしく、面と面の接合がきちんとしており、まったく隙がありません。

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