今回は、「実用時計」について考えてみます。例えば、ロレックスは最高の実用高級時計である、という言い方をされます。でもよくよく考えてみると、「実用時計」、これって不思議な単語ではないでしょうか?実用されない時計というのはそもそもあるんでしょうか?しかしながら、実用時計という言い方がある(英語にも同じような単語があるようです)からにはその対極の概念としてコレクション時計が存在する、あるいは、コレクションまたは工芸的価値のあるものが「時計」というカテゴリーには存在するということになります。 つい先立ってのオークションでは、ブレゲの懐中時計が二個6億円で落札されました。また、1943年製のパテックフィリップの純金製の永久カレンダー腕時計が2010年当時5億円で落札されたこともあります。これらは博物館で飾られる類のものでしょうから、実際に腕につけて使うことはないでしょう。まずこれらは純然たるコレクション時計であるといって間違いないと思います。とすると腕時計には、少なくとも実用して使われる時計と、コレクションをして楽しむ時計という二つの種類が存在することになります。 次は「実用高級時計」です。これもまた不思議な単語です。実用高級時計というものがあるとすると、実用中級時計、実用低級時計というのが存在してもおかしくないです。しかし、これらの単語はあまり聞きません。かわりに、ミドルレンジの機械式時計、低価格帯の腕時計という言い方はよく聞きますから、ここでの「高級」というのは、価格のことを言っているんじゃないかと考えてまあ間違っていなさそうです。 ここで冒頭の「ロレックスは最高の実用高級時計である」というフレーズをリフレーズすると、「ある程度高価格帯の実用に供される時計のなかでは、ロレックスは最高である」ということになります。おもしろいですね。高い時計が実用上いいというわけでは必ずしもない、というのが、この言い回しにも表われています。高価格帯の時計には、実用というよりコレクションとして楽しむ、審美性を楽しむことを目的としている場合があると捉えることも可能です。 さて画像は、ギャレットのExcel-O-graphです。MINT状態のこの時計は、私の「コレクション時計」です。ほとんど外に連れ出しません。1960年代後半の製造で、43mmという大振りなケースに名機エクセルシオパークを搭載しています。この時計がいいのは、航空計算尺を供えたそのデザインと大きさ、それとやはりカラーリングでしょうか。5分ごとに赤く塗られた30分計と赤いクロノグラフ秒針、センターは濃いインディゴブルー、 分秒目盛りは白でプリントされ、ゴチャっとしがちな文字盤でもしっかり視認性が確保できるようになっています。ケースの仕上げなどは、それはパテックなどと比較するとお世辞にもよいとは言えませんが、回転計算尺を供えた航空時計としては、必要十分に堅牢に仕上げてあります。 かつてのクロノグラフの名門として有名なギャレットですが、現在でも会社として存続しています。最近ではフライトオフィサーのミュージアムエディションなどを出したりしています。ウェブページは、 http://www.galletwatch.com/ です。
さて、機械式時計の「どこ」がいいのか?この「どこ」を切り分けるために、まずはここでいう「機械式時計」の位置付け、カテゴリー分けからはじめましょう。日本語では、機械式時計は、明らかに「時計」のカテゴリーです。つまり教室に掛けてある掛け時計や、札幌の時計台、目覚し時計、日時計や水時計も時計のカテゴリーです。膨大なモノを含むカテゴリーですね。 一方、英語ではどうでしょう。実は日本語でいう「時計」に、1:1で対応する英単語はありません。四捨五入しておおざっぱにいえば、「時計」=クロック(clock) + ウオッチ(watch)です。英語では、クロックとウォッチとは別のカテゴリーです。日本語では簡単に「おじい~さんのとけい~」と言えて、それが掛け時計でも懐中時計でも一向に構いませんが、英語では「おじい~さんのクロック~」(掛け時計の場合)または「おじい~さんのウォッチ~」(懐中時計の場合)と厳密に指定する必要があります。個人が身につけられていつでも時刻を知ることができる道具に、例えばポータブル・クロックではなく、わざわざ「ウォッチ」という特別な名前がつけられていることから、当時はこの技術がかなり革新的と捉えられたということが分かります。 一方日本語では、人間の活用する形態による分類というより、活用されている技術による分類となっています。つまり、掛け時計だろうが、腕時計だろうが、どちらにしても時間を計る道具でしょ?というスタンスです。 これは実は大きな違いですね。英語圏では、時間をいつも正確に読みとりたいというニーズがとても高かったことに対して、日本語圏では、そのニーズはそれほど高くはなかったとも言えます。もともと米の飯をお腹いっぱい食べることを目標に田畑を耕していた我らが先祖たちは、おてんとさまが真ん中あたりだから昼にしよう、で済んでいたのかもしれません。 しかしながら結果的に便利なことに日本では、セイコーやシチズンが「時計メーカー」として腕時計も掛け時計も作れます。しかし、英語圏では「時計メーカー」という便利な概念はありません。あるのは、ウォッチメーカーとクロックメーカーです。ロレックスは ウォッチメーカーです。クロックメーカーとしては例えば エルウィン・サトラー など、まったく別の会社になります。 ということで、ここで扱うのは、WristWatchの機械式時計の話になります。 写真は新型のロレックスデイトナ。ムーブメントはロレックス自社製のCal.4130です。 クロノグラフの動力伝達にはセイコーが世界で初めて開発した垂直クラッチ方式を採用しています。
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