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機械式時計のどこがいいのか? その12

機械式時計のどこがいいのか? その12 クオーツ時計は、機械式時計と比較してトルクが弱く、針のデザインに制約があるという話でした。トルクという量は、回転軸からの距離と重さを掛けたものになります。時計でいえば、針が長ければ長いほど、重ければ重いほど、運針には大きなトルクが必要になります。ミヨタのムーブ同士の比較では、分針の運針トルクに3倍以上の差がありました。0.1g以下の針で3倍というのはかなり大きな差です。昨今のわりと大きめのクオーツ時計の針が視認性を確保できる範囲で薄い針を使ってあり、またできるだけ短い針を使うようにデザインされているのが分かってきたような気がします。 画像は セイコーブライツのエグゼクティブ電波ソーラーとアナンタのメカニカルクロノグラフです。クオーツの視認性も悪くはないものの、やはり針の存在感の違いは歴然としています。 ところで、トルクが弱いことは悪いことばかりではありません。機械式時計は、トルクが強いそのために機械の摩耗が激しく、またとくに摩耗する箇所にはその対策のためのルビー(石)が必要になります。定期的なオーバーホールは必須です。一方、弱いトルクで少ない部品を駆動するクオーツは、オーバーホールしなくても電池交換のみで10年使えているという例も少なくありません。 時折、機械式時計は電池を使わないからエコだという言い方をされます。しかし、これは機械式時計がきちんとメンテナンスされていることが前提です。メンテされていない機械式時計は、ただの鉄のかたまりです。電池さえ交換すれば使い続けられるクオーツ時計とどちらがエコか、きちんとメンテナンスすることを前提にしないと、いちがいには言えないような気もしてきます。

機械式時計のどこがいいのか? その9

さて、クオーツ時計と機械式時計との比較中でした。まずは、よく調整された機械式時計の精度はクオーツ時計と比較してもそれほど大きい差はない。時計雑誌にはよくクオーツのほうが振動数が高いから精度がいいと紋切り型に書いてありますが、いちがいにそういうことは言えなさそうだということが分かってきたのかと思います。 次に考えてみたいのが「視認性」です。電池で駆動するクオーツ時計は、電池を長持ちさせなければいけない。その結果、トルクを弱めにしなければいけなく、機械式時計のように太い針を運針させることが難しい。従って、視認性は悪くなることが多いという話でした。これは一般論としてよく言われますし、私もそう思い込んでいました。しかし、最近のファッション時計では45mmとかの大きいサイズもありますし、視認性のよいクオーツ時計もあるように思えます。 画像は、ブレラというイタリア製の時計です。機械式時計に詳しい人は、針の仕上げや文字盤の仕上げなど、いろんなことでまだまだだとおっしゃるでしょうけど、例えばケースの仕上げとかはそれなりによさそうだし、文字盤上に置かれた立体的なアプライドインデックスもいいように見えます。もちろん仕上げがそこそこいいということは、値段もそれなりで10万円弱の値札がついてますが、なにより、これはサイズが44mmとかなり大きく、このサイズでこの針の大きさだと「視認性」はそんなに悪くなさそうです。 クロノグラフでは例えばオバマ大統領の時計として有名はアナログクロノグラフなどもあります。中国製でムーブメントはシチズンの子会社ミヨタ製、サイズは41mmです。 次の画像はグランドセイコーSBGX067。ベーシックな年差クオーツモデルです。これになると文字盤の仕上げといい、針といい、一般的な機械式時計とほとんど遜色ないように見えます。ムーブメントはセイコー製9F62 。 なんだかクオーツ時計の視認性もそれなりにいいように思えてきました。

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