前回、前々回と日本の製造業のコストを見てきた。工場を稼働させ、原材料を最終製品にするコストはそう小さいものでもなかった。 今回は、Swatch groupの財務報告書を見てみよう。Swatchは、ブレゲ、オメガ、ロンジン、ティソといった時計業界の有名ブランドだけではく、ハリー・ウィンストンやカルバン・クラインといッた宝飾、ファッションブランドもその一員に数える一大企業である。 2019年度の報告書によると以下である。日本とは基準が違い、売上原価は記載されていないが、人件費と原材料費が記載されている。(1スイスフラン=112.2円換算) 総売上高: 924,864 (百万円) 営業利益: 114,780 (百万円) 原材料購入費: 179,520 (百万円) 人件費: 289,251 (百万円) その他の業務費用: 300,696(百万円) この内容からも比較してみると興味深いことが分かる。 セイコーの場合、原価の売上に対する比率は約6割であった。Swatchの場合、原材料購入費および人件費を合算して原価とすると、おおよそ5割となる。人件費には工場以外の人員も含まれているだろうから、おおよその目安として、Swatchの製造原価は、セイコーのそれよりも1割以上は低いと考えてもよいだろう。 Swatchは、その他の業務費用が著しく大きい。おそらくこの大部分が広告宣伝費用と思って間違いないだろう。セイコーの時計事業の売上は約1400億円であり、時計事業を含む全体の広告宣伝費に約170億円を計上している。仮にこの広告宣伝費がほとんど時計事業に使われているとすると、その割合は、売上の約1割に相当する金額である。Swatchの場合、その他の業務費用の割合が約3割にも達する。Swatchはオメガ、ロンジン、ハリー・ウィンストンといった一流ブランドをワールドワイドに展開しているから、広告宣伝費がセイコーよりも巨額を要するのは間違いない。 さて、今回の時計は、往時のOmegaのドレスウォッチ、DE VILLE である。シリアルからムーブメントは1969年製造と思われる。
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