時計の精度、このことは時計の発明以来、数百年来追求されてきた時計の本質である。

一つ興味深いグラフを掲載する。これは昭和48年当時、当時第二精工舎の生産技術部の林保夫氏の論文「最近の腕時計と量産技術」から引用させていただいた(赤ラインは筆者)

発振周波数が高ければ高いほど、精度はよくなることがこの図から分かる。しかし、その赤丸をつけた部分を見ると、例えば振り子時計は発振周波数は低い(黒塗り四角)が精度はよい(白抜き四角)。これはいったいどうしたことであろうか。
この論文が書かれた当時、昭和48年(1973年)には、このことはおそらく自明なことであったであろうと想像する。が、現在2017年の我々には少し説明が必要に思えてしまう。

またよく見ると、テンプ式機械式時計、これはいわゆる機械式腕時計のことであるが、この精度は、当時でも日差10秒以上〜1秒未満と二桁違っている。つまり、当時でも日差一秒未満の腕時計は存在しており、一方でおそらく日差10秒以上の時計というのは当時の量産タイプ(といっても現在の量産腕時計よりは随分高価であったはずだ)と考えても間違ってはいないだろう。

同じメカニズムで二桁精度が違うというのは機械式時計というのは実に面白い仕組みだと思わないだろうか。例えば高級車だからといって最高速度が二桁変わるわけではない。戦闘機とボーイング747でも最高速度の違いはせいぜい1桁である。ところが機械式時計では同じメカニズムを採用している量産モデルと高級モデルとで精度が2桁違うのである。これがマイクロメカトロニクスの面白いところなのであろうか。